サプリのはなし 第10回 ビタミンK

今回はビタミンKについてお話します。

 

実際はこの構造式の-Rのところに側鎖がついています。

 

 

ビタミンKは、脂溶性ビタミンの一種です。ビタミンK依存性タンパク質の活性化に必須であり、動物体内で血液の凝固や組織の石灰化に関わっています。したがって欠乏すると出血傾向となり、また骨粗鬆症動脈硬化に関連していると考えられています。

 

種類

ビタミンKにはK1からK5の5種類が知られています。天然のビタミンKは2-メチル-1,4-ナフトキノンを基本骨格とし、3位に結合した側鎖の構造に違いがあります。ここでは主に動物体内におけるビタミンとしての解説を扱います。

ビタミンK1

フィロキノン、ファイトメナジオンなどとも呼ばれ、植物が光合成に使うために合成しています。摂取源としては葉菜類、植物油、豆類、海藻類、魚介類などが挙げられます。


ビタミンK2

メナキノンとも呼ばれ、その側鎖の長さによってメナキノン-4、メナキノン-7の様に区別されています。この数字は側鎖を構成するイソプレン単位の数を表しており、それぞれMK-4、MK-7のように略記されます。MK-4は動物体内に多く存在するもので、食餌から得たビタミンK1を動脈壁や膵臓、精巣などで変換しています。原核生物はMK-6からMK-14という側鎖の長いメナキノンを合成し呼吸に利用している。摂取源としては食肉、鶏卵、乳製品などが挙げられるが、納豆には非常に多く含まれています。

ビタミンK3

メナジオンとも呼ばれ、動物体内で代謝されてビタミンK2となる。代表的な合成ビタミンKであるが、動物体内にも反応中間体としてわずかに存在します。大量摂取により毒性を示すためサプリメントとしては使用されませんが、安価なビタミンK源として動物用飼料に添加されています。

ビタミンK4
メナジオールとも呼ばれ、ビタミンK3の還元型でです。

ビタミンK5
4-アミノ-2-メチル-1-ナフトール。ビタミンK4の4位の水酸基をアミノ基に置換したものです。
これら一群の化合物は動物体内でビタミンKとして作用するが、全く等価という訳ではありません。

 

機能

ビタミンKはガンマグルタミルカルボキシラーゼ(別名ビタミンK依存的カルボキラーゼ)という酵素の補因子です。また、食事から摂取したビタミンKは生体内で転換され、核内受容体(SXR/PXR)と結合しコラーゲン産生に関与していることが知られています。

 

血液凝固とビタミンK

血液凝固に関わる多くの因子がビタミンK依存性タンパク質であり、ビタミンKは正常な血液凝固に必須です。成人では、通常の食事で血液凝固に関してビタミンK不足になることはほとんどありませんが、新生児、乳児、肝疾患等により、出血症が知られています。新生児用の粉ミルクにはビタミンKを添加することがあります。また、産科では出生時、出生1週間、一か月健診などの頃合いでビタミンKシロップを投与します。

 

代謝とビタミンK

ビタミンKのうちビタミンK2(MK-4)が骨粗鬆症の治療薬として利用されています。骨形成マーカーの1つであるオステオカルシンは、ビタミンKによって活性化され骨代謝を調節します。このオステオカルシンを十分に活性化するためには、血液凝固を維持するために必要なビタミンK量よりも多くのビタミンKを摂取しなければなりません。納豆を多く食べる習慣のある地方では、納豆をあまり食べない地方よりも骨折が少ないことが知られており、納豆に含まれるビタミンK2(MK-7)が骨折を予防する因子と考えられます。ビタミンKのうち、MK-4やMK-7などのビタミンK2はオステオカルシンを活性化するだけでなく、骨組織に対して直接的に骨形成を促進し、骨の破壊を抑える効果があります。また、ビタミンK2は、骨のコラーゲン生産を促進し、骨質を改善する点に特徴があります。

 

病気との関連

動脈硬化

動脈にカルシウムが沈着する動脈石灰化が動脈硬化症の最も重要な症状の1つとして認識されています。ビタミンK依存性タンパク質の1つであるマトリックスGlaタンパク質(MGP)を欠損したノックアウトマウスは、全身の動脈にカルシウムが沈着し死亡します。心臓病とビタミンK摂取量を調べた疫学研究で、ビタミンK2の摂取量が高い群では低い群と比べて動脈石灰化が抑制され、心臓病による死亡率が半分程度であったことが報告されました。ビタミンK1摂取と石灰化抑制に関連が認められない一方で、ビタミンK2摂取は摂取量と石灰化抑制に関連が認められるとする報告があります。また、臨床試験においてビタミンK1とビタミンDを3年間投与すると血管の弾力性が維持されることも知られています。

 

その他

 ✔ビタミンK2の高用量摂取はメタボリック症候群の発生を減らすとの報告があります。
 ✔ビタミンKはインスリン抵抗性(感受性)を改善し、2型糖尿病のリスクを低下させると示唆されています。
 ✔ビタミンK1が白内障のリスクを低減するとする報告があります。
 ✔アルツハイマー病の患者ではビタミンKの摂取量が少ないとする研究があります。
 ✔歯周病病巣部では歯肉溝滲出液中のビタミンK1濃度が低いという報告があります。
 ✔ビタミンK2(MK-7)はアディポネクチンを増やし内臓脂肪を低減させる可能性があるそうです。
 ✔ラットではビタミンK1の塗布により傷の治りが早まるという報告があります。
 ✔ビタミンKと炎症との間に逆の相関がありビタミンKが多いと炎症マーカーが低くなるとするコホート研究があります。

 

摂取

目安量

目安量(AI)は「潜在的な欠乏状態を回避できる摂取量として82 µg/日(体重72 kg)が必要であるとのアメリカの報告」に基づいて体重比で求められていて、通常の食生活で充分に摂取されていれば欠乏症に陥ることはほとんどないと考えられています。

 

目安量(AI、2010年版)

 

 

  年齢  男性  女性

18-29歳  75µg  60µg

30歳以上 75µg  65µg

 

目安量(AI、2015年版)

年齢 男性 女性
18-29歳 150µg 150µg
30歳以上 150µg 150µg

 

上限量(UL)
ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)については副作用の報告がなく耐容上限量は設定されていません。
ビタミンK3(メナジオン)は大量摂取による毒性が認められる場合があるとしています。

病気の場合
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、250-300µgの摂取を推奨しています。

 

摂取源

腸内細菌の合成
ヒトなどの腸管内には腸内細菌が生息していますが、腸内細菌はビタミンB群や、ビタミンKの合成を行っています。腸内細菌は、長鎖MK(MK-8~MK-13)を多く作ります。成人では腸内細菌の作るビタミンKにより必要量をまかなえると考えられていたが、腸内細菌由来のビタミンKを下部消化管から吸収することは難しく、腸内細菌由来のビタミンKの利用だけでは十分に得ることができません。

 

食事からの摂取

食品 1食分 ビタミンK
(μg:マイクログラム)
 
ブロッコリー 1/4株(60g) 96 µg  
小松菜 1/4束(95g) 200 µg  
キャベツ 1 枚 (50g) 39 µg  
にら 1/4束(30g) 54 µg  
モロヘイヤ 1/4束(60g) 384 µg  
ほうれん草 1/4束(60g) 162 µg  
納豆 1パック(50g) 300 µg  
干しワカメ 5g 33 µg  
鶏もも肉(皮付き) 1/2枚(120g) 35 µg  

以下は100g当たり

 

ビタミンK1が多い食品
シソ(1007µg)、春菊(茹で、627µg)、ほうれん草(茹で、525µg)、小松菜(茹で、425µg)、ブロッコリー(生、307µg)、大豆油(234µg)

ビタミンK2(MK-4)が多い食品
鶏卵(黄身、64µg)、鶏(もも、27µg)、バター(21µg)、マヨネーズ(197µg)

ビタミンK2(MK-7)が多い食品
納豆(939µg)

納豆菌はビタミンKを生成しており、ビタミンKの含有量が高い。

 

欠乏症

 ✔血液凝固能の低下。
 ✔新生児・乳児のビタミンK欠乏性頭蓋内出血。
 ✔新生児・乳児の腸内出血(新生児メレナ)。症状は、タール様の黒色便など。
 ✔潜在的な欠乏は、骨粗鬆症や骨折、動脈硬化

 

医薬品との相互作用

血液凝固防止薬
ワルファリンカリウム(ワーファリン)…ワルファリンの作用が減弱する可能性がある。