未就学児の学習意欲は知識量に左右される?

 新しいことを学ぼうとする未就学児の意欲を維持する鍵は、どうやら知識量らしいです。未就学児は、あることが面白いと分かるだけの知識を持っていれば、それについてもっと知ろうとするが、知識が多過ぎると退屈だと感じてしまうことが、米ラトガーズ大学認知心理学分野のJenny Wang氏らによる研究で明らかになりました。この研究結果は、「Psychological Science」に6月28日に公開されました。

 Wang氏は、「この世界には情報が無限にある。幼児は、極めて短い期間で非常に多くのことを学び取らなければならないにもかかわらず、楽しみながら効率よく学習している。われわれは、幼児の好奇心を突き動かしているものが何なのかを突き止めたかった」と研究背景を説明しています。

 研究ではまず、50人の3~5歳の未就学児(24人が女児、平均年齢4.95歳)を対象に、生物学的伝播、心因性の現象、心の理論の3領域に関する知識レベルを、それぞれ6つの質問で測定しました。質問の例は順に、「風邪をひいている人とスプーンを共有することで風邪がうつりますか?」、「悲しいだけで胸が痛むことがありますか?」「クレヨンの箱の中には何があると思いますか?」です。その上で対象者を、未熟な理論の持ち主(不確かなことが多い)と、より成熟した理論の持ち主(不確かなことが少ない)に二分しました。

 次に、同氏らは自分たちで作った物語を対象者に読み聞かせました。その物語は結末が未決で、読み手である子どもたちが、その本のテーマと関わりのある結末か(例:主人公は感染性の病気の友達と長く接したことで病気になったのかどうか)、関わりのない結末(例:主人公が朝食として選んだのは2つの選択肢のうちのどちらか)を1つだけ選んで知ることができるようになっていました。

 その結果は、Wang氏らの予測を覆すものでした。直感的には、科学者のように知識の豊かな人の方が、好奇心旺盛であるように思われました。しかし、この研究では、物語のテーマと関わりのある結末を選んだ未就学児の割合は、「未熟な理論の持ち主」に分類された未就学児の方が、「より成熟した理論の持ち主」に分類された未就学児よりも高かったのです(67%対49%)。

 こうした結果は、Wang氏らが50人の未就学児(女児26人、平均年齢4.82歳)を対象に行った2番目の実験でも確認されました。この実験では、対象者を知識レベルに応じて3つの群に分けてさらなる解析を行いました。その結果、物語のテーマと関わりのある結末を選んだ未就学児の割合は、知識レベルが真ん中に分類された群で80%であったのに対して、低い群も高い群もともに53%でした。 

 こうした結果についてWang氏らは、知識が多過ぎることも少な過ぎることもない「“最適な”量の知識を持ち合わせている未就学児では、不確実性と好奇心が最善のバランスで入り混じった状態となっており、それがもっと知りたいという意欲につながっている」と説明しまいます。

 さらにWang氏は、「幼児はもともと好奇心旺盛だが、生まれながらに持っているこの好奇心をどう活用していくかは難しい問題だ」とした上で、「最終的には、このような研究結果が、自分を取り巻く世界について積極的に探索して学んでいこうとする幼児を、親や教育者がサポートする際に役立つだろう」と結んでいます。