Ⅲ.脳の高次機能と活動 ストレス反応のしくみ ストレス反応が起こるメカニズム

ストレスとは、外部から恐怖刺激や嫌悪刺激を受けたときに生じる生理的反応です。その反応には、とくに視床下部が関与しています。今日はこの辺を勉強しましょう。

 

ストレスという言葉はもともと、構造物に対する物理的力をさしていて、これが生理学に応用されて、嫌悪や恐怖刺激に対する生理的反応をさすようになりました。

 

ストレスを受けると、心臓の鼓動が速くなり、血圧が上がり、全身の筋が緊張するなど、さまざまな身体的反応が起こります。その経路はストレスの種類によって異なります。

 

ストレスの種類のひとつは、恐怖や不安などの情動的・心理的ストレスです。この場合は、まず大脳皮質や大脳辺縁系が興奮し、視床下部の室傍核(PVN)に伝わります。

 

もうひとつは、身体に大きな負担がかかる、身体的ストレスです。この場合は大脳皮質を経由せず、末梢からの情報が直接、視床下部室傍核に伝わります。

 

情動的・心理的ストレスも、身体的ストレスも、視床下部室傍核に伝えられるのは同じです。この室傍核から下垂体→副腎系へと信号が伝導されていきます。この回路をHPA axisといいます。

 

下垂体と副腎は、ストレス信号に反応して体内環境を調節するホルモンを分泌する、いわばストレス反応の前線部隊です。前線部隊はもうひとつ、交感神経系があります。この両者が心臓や筋肉などに働きかけて、さまざまなストレス反応を引き起こします。

 

その指示を送る司令官である室傍核は、下垂体後葉に反射する大細胞性部、下垂体前葉に投射する内側の小細胞性部、自律神経核に投射する背側・腹側の小細胞性部の3領域に分かれています。

 

ストレス反応の司令塔・HPA axisを亢進させているのは副腎皮質刺激ホルモン(CRH)とペプチドホルモンのカテコールアミンです。ストレス刺激が生じると、橋にある蒼斑核(そうはんかく)などのカテコールアミン産生ニューロンが活性化し、カテコールアミンが産生されます。

 

副腎皮質ホルモン放出ホルモンは、室傍核の小細胞性部で産生され、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促します。

 

一時的で、それほど大きくないストレスなら副腎皮質ホルモン放出ホルモンが中心だが、慢性的にストレス負荷がかかると、下垂体後葉からアルギニンバソプレシンというペプチドホルモンも分泌され、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促します。

 

う~ん、なるほど。ストレス環境下でコルチゾールが増加するというのはこれが原因なのですね。