Ⅲ.脳の高次機能と活動 学習のしくみ 言語処理と言語産出のしくみ

ヒトならではの高次の学習機能のひとつに、言語の習得と操作があります。読む作業、聞く作業ともに複数の領域が協力しあい、複雑な作業を遂行しています。今日はこの辺を勉強しましょう。

 

脳の損傷により言語能力が損失することを失語症といいます。脳と言語の関係を知る上で、よく研究されてきたものに、ブローカ失語症とウェルニッケ失語症があります。

 

ブローカ失語症は、会話や文字の内容は比較的よく理解できるのに、発話がうまくできないタイプです。別名、運動性失語症とも呼ばれます。

 

この失語症の人は発話が困難で、話しても片言程度です。適切な言葉を見つけられず、内容とはまったく関係ないにも関わらず、自分がよく知る名詞をとぎれとぎれで発語することも少なくありません。

 

原因は前頭葉の運動連合野の一部であるブローカ野の損傷です。この領域は一次運動野に近く、口や唇の運動である発話に関与していると考えられます。

 

これに対し、ウェルニッケ失語症は、発語は流暢ですが、理解力に乏しいタイプです。別名、感覚性失語症ともいいます。

 

話し方は流暢で、文法的に正しい文章を組み立てることもできるが、内容はほとんど意味をなさないのが特徴です。会話がちぐはぐになるだけではなく、簡単な指示に沿って行動することもむずかしくなります。

 

この失語症の損傷領域であるウィルニッケ野は、側頭葉後部にあり、聴覚野に隣接しています。この領域は入力された音声を言葉の意味の記憶と関連付けるという音声認識の高次機能に関わると考えられます。

 

この2つの失語症以外にも、脳の損傷領域によってさまざまなタイプの失語症があり、言語が脳の異なる領域において段階的に処理されていることがわかります。

 

言語に関して私たちは耳で聞いた言葉を理解し、さらに文字になった言葉を読んで、それを理解します。この2つの能力は、耳と目という異なる感覚器を使用しているため、情報処理回路もそれぞれ異なっています。

 

言葉を聞く場合は、音声認識の回路が機能しています。耳から入った聴覚信号が一次聴覚野に届き、語彙の認知回路を経由して、言語として理解されるのです。

 

一方、文字として書かれた言葉を理解する場合には、目による視覚信号が一次視覚野に入り、その後、語彙の認知経路で理解されます。

 

語彙の検索は縁上回(えんじょうかい)でおこなわれているとされていて、その部位の灰白質(かいはくしつ)密度は語彙の量と相関しています。第二言語の運動能力も、この密度と相関すると考えられます。

 

重症のてんかん患者に対する治療法として、脳梁(のうりょう)を切断して左右の脳半球を分離する、脳梁離断術があります。手術により、左右に切り離された分離脳の研究からわかったのは、言語に関わる機能が左右対称ではないことでした。

 

脳梁離断術を受けた患者に、右の視野に数字や単語、絵などを見せると患者は問題なくそれを述べることができます。しかし左の視野に同じものを提示しても、それが何か述べられないどころか、そこにはなにもないと言ったそうです。

 

こうした実験結果から、話すこと、読むこと、書くことなどは、すべて左半球支配であることがわかりました。一方右半球は、話すことや書くことには関与していないが、言語を理解する点では大きな役割を果たしています。

 

左右の半球にはこのような非対称性がありますが、機能が完全に分かれているわけではなく、機能が互いに補完している面もあると考えられています。