アルツハイマー新薬「アデュカヌマブ」、2週間以内に全米へ出荷、量産準備急ぐ

 米バイオジェンとエーザイが共同開発したアルツハイマー病(AD)治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認されました。2週間以内に製品出荷を始め、全米900カ所超の医療機関で治療が始まる見通しです。米国の主力工場とスイスの新工場で年間200万人分の供給体制を確立します。処方基準となるアミロイドβ(Aβ)の検査体制拡充や、患者の費用負担を軽減する薬剤提供プログラムの導入も急ぎます。

 バイオジェンのミシェル・ヴォナッソス最高経営責任者(CEO)はオンライン説明会で8日、「AD患者とサイエンスとバイオジェンにとって、記念すべきエキサイティングな日を迎えた」とコメント。エーザイの内藤晴夫CEOも9日の会見で、自社創製した認知症治療薬「アリセプト」が約25年前に米国承認されたことを振り返り、「感無量の思いだ」と語りました。

 向こう2週間以内に初出荷し、全米で販売が始まる見通しです。すでに900カ所以上の医療機関で導入が決まっています。米国ではバイオジェン主導で販売活動を展開し、利益配分の比率はバイオジェン55%、エーザイ45%だそうです。

 量産体制も本格化する。13社のサプライヤーから5000品目以上の原材料を調達し、米ノースカロライナ州の主力工場、スイス・ゾロトゥルンの新工場で原薬を製造します。まずは年産200万人分の供給体制を確立します。充填などの製剤化工程はCMO(医薬品製造支援)も活用し、技術移転も進めています。

 スイスの新工場は、バイオジェンが累計20億ドルを投じて立ち上げたバイオ医薬品の製造拠点です。プロセスの自動化なども進め、培養効率は業界トップレベルの1リットル当たり10グラム超を達成したといいます。現在稼働している製造ライン(マスターセル)は一つですが、年内に1ライン増やします。最大7ラインまで拡張できる設計で、フル稼働すれば年400万人分の供給が可能といいます。

 課題は、処方患者を確定する臨床検査体制と医療保険の対応です。同剤はAβが蓄積しているAD患者に使われます。主にPET(陽電子放出撮影法)かCSF(脳脊髄液)検査で判断されますが、検査機器が不足し、保険適用されていない検査もあるため、臨床検査会社などと協力して検査しやすい環境を作る構想です。薬事承認上は症状が進行した患者への投与も可能ですが、両社は軽度ADや認知機能障害の患者をターゲットにするそうです。これらの層でAβ陽性の患者は米国で100万~200万人いると推定してされています。

 治療費(卸への販売価格)は年間5万6000ドル(約610万円)。処方患者の85%以上は高齢者向け公的医療保険(メディケア)が適用され、多くは追加の保険プランも利用していることから「自己負担額は大きくない」(エーザイ)とみています。低所得者向けプランや無償提供プログラム、治療効果に基づく支払制度なども導入し、患者の自己負担を軽減する仕組みを構築します。