Ⅱ.神経系の構造と機能 特殊感覚を伝える神経の構造 平衡覚伝導路のしくみ

耳の機能は音情報を感知し、処理するだけではありません。体の傾きなどの変化をキャッチし、脳幹などに伝えて全身のバランスを調整する役割も果たしています。今日はこの辺を勉強しましょう。

 

内耳では、音だけではなく平衡覚も感知しています。平衡感覚には、回転運動の変化の感知、傾きの感知の2種類があり、情報をとらえる器官がそれぞれ異なります。

 

回転運動の感知を行っているのは半規管です。一般的に三半規管と呼ばれるのは前半規管、外側半規管、後半規管の3つの半規管を総称したものです。

 

3つの半規管は、お互いが直角をなして、三次元の位置関係をもちます。

 

傾きの感知を行っているのは、内耳の前庭にある耳石器です。耳石器は半規管と蝸牛の間の膜迷路にある、卵形嚢と球形嚢という器官の総称です。この袋状の器官の内表に、平衡斑と呼ばれる膨らんだ部分があり、上部に炭酸カルシウムの結晶である耳石(平衡砂)が存在しています。

 

3つの半規管にはそれぞれ、クプラと呼ばれるゼラチン質で埋められた膨大部があり、このクプラ内に、有毛細胞の感覚毛が詰まっています。

 

頭部を回転すると、半規管の内リンパが流動するため、クプラが押されて感覚毛がそれを感知します。3つの半規管がそれぞれの位置で感知するため、頭部がどのように回転したか三次元で検出できます。

 

耳石器では、頭部が傾くと耳石が動き、平衡斑の有毛細胞がそれを感知します。

 

半規管と平衡斑にある有毛細胞は回転運動や傾きにより刺激されると、イオンチャネルによって脱分極して活動電位を生じますが、シナプスでの情報伝達には特徴があります。通常のシナプスは、大きな電位変化があると神経伝達物質を放出しますが、有毛細胞は常に伝達物質を放出し、電位変化によって放出の量を変えているのです。なお有毛細胞にはⅠ型とⅡ型があります。

 

半規管と耳石器が感知した情報は前庭神経節に集まり、神経線維は脳幹に入り、さらに前庭神経核に伝導されます。

 

前庭神経核からの二次ニューロンは、一部は小脳に投射し、その他は脊髄や眼筋運動核群へ投射します。その情報を得た脳幹は、姿勢の変化を正すために、眼球や頸部の筋などに指令を送ります。頭部が回転したり傾くなどで姿勢が変化すると、それを元に戻そうとするこの反応を前庭反射といいます。

 

前庭神経核には、体性感覚や視覚など、多くの感覚情報が集まっています。それらの情報を総合して全体を詳細に認識することではじめて、前庭反射が形成されます。