「緑地が多い」地域に暮らす高齢者、うつ症状が10%少ない

緑地がうつ症状に及ぼす影響、都市と非都市に分けて分析

 千葉大学は4月16日、65歳以上の高齢者12万6,878人を対象に、うつ症状(以下、うつ)の少なさと緑地の多さの関係を分析し、緑地が多い地域に暮らす高齢者はうつが10%少ないことがわかったと発表しました。この研究は、同大予防医学センターの西垣美穂特任研究員、花里真道准教授、古賀千絵特任研究員、近藤克則教授の研究グループによるものです。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されています。

 高齢者のうつは要介護リスクのひとつで、公衆衛生上の課題とされています。近年、心理的ストレスやうつに対して、緑地が及ぼす良い影響が世界各国から報告されています。しかし、どのような種類の緑地の多さが高齢者のうつの少なさと関連するかは、ほとんど明らかにされていません。また、緑地研究の多くは都市で行われており、非都市での研究は限られています。都市と非都市の違いは、緑地に対する人々の印象や緑地での行動の違いに作用し、緑地の種類と高齢者の健康の関連に異なる影響を与える可能性があります。そこで研究グループは、地域の緑地の種類と高齢者のうつの関連を明らかにすることを目的として、対象地全域だけでなく、都市と非都市で分けた分析を行いました。

12万人以上の高齢者対象、樹木・草地・田畑といった緑地の種類との関連も調査

 2016年実施のJAGES調査に参加した全国41市町に在住する要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者12万6,878人(男性6万1,493人、女性6万5,385人)を対象としました。うつは、老年期うつ評価尺度5点以上。緑地は、881校区ごとの校区面積における緑地面積の割合とし、緑地データは宇宙航空研究開発機構の観測衛星が取得した衛星写真から作成された、高解像度土地利用土地被覆図を用いました。緑地の種類は「樹木」「草地」「田畑」およびそれらすべてを足し合わせた「総緑地」としました。OECDの定義するFunctional Urban Areaの人口150万人以上の地域を都市、それ以外を非都市としました。

 都市と非都市、およびそれらを総計した対象地全域の対象者を、地域の各緑地面積割合の多さで<少>、<中>、<多>に分けました。地域の緑地が<少>の者がうつと判定される場合を1とした場合に<中>、<多>の者がうつと判定される確率を評価。個人の性別、年齢、教育歴、等価所得、家族構成、就業状況、外出頻度、車の運転の有無、最長職、居住年数、地域の居住地人口密度、年間日照時間、最深積雪量、平均降水量の影響を調整して統計学的な評価しました。

都市で「樹木」が多い地域、非都市で「中量の草地」がある地域の高齢者はうつが少ない

 うつは全体の20.4%(2万5,846人)でした。対象地全域では、総緑地が多い地域は少ない地域に比べて、高齢者のうつは約10%少ないことが明らかになりました。都市では、「樹木」が多い地域は少ない地域に比べて、高齢者のうつは約6%少ない結果でした。一方、草地や田畑とうつに統計的な関連はみられませんでした。また、非都市では、「草地」が中量の地域は少ない地域に比べて、高齢者のうつは約9%少ない結果となりました。一方、樹木や田畑とうつに統計的な関連はみられませんでした。今回のような結果が、偶然観察される確率を計算したところ5%未満であったといいます。

都市と非都市では高齢者のこころの健康によい緑地の種類が異なる可能性

 緑地が多い地域に暮らす高齢者は、うつが少ないことが示唆されました。さらに、都市では樹木が多い地域、非都市では中量の草地がある地域の高齢者はうつが少なかったことから、都市と非都市では高齢者のこころの健康によい緑地の種類が異なる可能性が考えられました。

 「研究結果は世界保健機構(WHO)が提唱する、エイジフレンドリーシティ(高齢者に優しい都市)に資する知見が得られたと言えます。研究成果を活用した地域特性に応じた緑地を活かしたまちづくりをすることで、高齢者に対する健康まちづくりにつながることが期待される」と、研究グループは述べています。