てんかんの原因遺伝子を調べることが治療に有用

 てんかんの症状を有する小児を対象としたデンマークの研究で、対象者の半数に、てんかんの原因となる遺伝子変異が生じていることが明らかになりました。デンマークてんかんセンターのAllan Bayat氏らによるこの研究結果は、欧州人類遺伝学会(ESHG 2021、8月28~31日、オンライン開催)で発表されました。

 この研究は、2006~2011年に出生した小児290人を対象にしたものです。大半の小児は既に、発達性およびてんかん性脳症、焦点性または多焦点性てんかん、全般てんかんなどの診断を受けていました。その他の小児は、高熱を伴うけいれん発作の既往があり、発作が長引いたり、発作と発作の間に意識が戻らないことがありました。

 290人のうちの211人に対して遺伝子解析を行ったところ、その半数において、36個の遺伝子にてんかんの原因となる変異(コピー数変異14カ所、一塩基変異86カ所)のあることが判明しました。また、遺伝子診断を受けた対象者の半数に、個別化治療を実施できる可能性があることが明らかになりました。さらに、全エクソームシーケンシングにより、てんかんに関連すると考えられる遺伝子が新たに3種類見つかりました。Bayat氏は、「製薬会社や科学団体が、新薬を開発するか、別の疾患治療薬として使われている既存の薬剤の用途を変更し、現在利用できない患者にもテーラーメイド治療が行えるようになることを期待する」と述べています。

 遺伝的要因を特定できることの利点の一つに、潜在的に有害な治療を回避できることがあります。遺伝子解析からは、単一遺伝子が関与するてんかんの大部分は、中枢神経系に豊富に存在する膜貫通タンパク質であるイオンチャネルの変化が引き金となって発症することが示されています。遺伝子変異の中には、イオンチャネルの機能を低下させるものもあれば、増大させるものもあります。しかし、現在利用可能なほとんどの抗てんかん薬は、イオンチャネルを標的にして、その働きを阻害します。そのため、遺伝子変異により既にイオンチャネル機能が低下している患者では、そのような抗てんかん薬による治療が、むしろ有害となる可能性があります。こうしたことも踏まえて研究グループは、「この研究から得た知見が適切な治療の指針となり、不必要な診断検査を減らすことにつながるのではないか」と期待を示しています。

 Bayat氏によると、近年、てんかんに関連することが判明した遺伝子の数は500種類以上にも上るといいます。同氏は、「現在では、多くの国で遺伝子パネル検査やエクソームシーケンシングが日常的に行われている。このような遺伝子検査は、とりわけ3歳未満からてんかん発作が生じている小児や、発作、脳形成異常、認知機能の問題に関する家族歴がある小児では重要だ。しかし、世界の中には、このような小児に対して遺伝子検査が体系的に提供されていない地域も多く、症状が現れてから検査を受けるまでに大幅な遅れが生じることも多い」と指摘します。その上で、「今回の結果は、適切なカウンセリングと治療を受けるために、このような小児に遺伝子検査が不可欠であることを示すものだ」と強調しています。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされます。